マサキの部屋

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特捜ロボ ジャンパーソン 第24話「史上初倒せぬ敵」について

今回は久しぶりに長く語ります!!

第24話「史上初倒せぬ敵」

1993月7月11日放送 脚本:扇澤延男 監督:三ツ村鐵治

SS-Nは並みの攻撃を受けても、ビクともしない不死身の人造人間モドキを生み出した。ジャンパーソンはモドキを人間と判断して倒すことができなかった。だが、モドキは自分が人間そっくりであることに葛藤を覚え始めた時、飛び降り自殺を図った女性を咄嗟に助ける。一方、モドキを倒すことに躊躇するジャンパーソンに対し、かおるは完全抹殺すべきだと説く・・・。

史上初倒せぬ敵

史上初倒せぬ敵

  • 発売日: 2017/01/20
  • メディア: Prime Video
 

不死身の人造人間モドキ

 

今回のテーマは「人間とは?」であろう。シリアスかつ、深いテーマの物語であるが、モドキと女性のロマンスも同時に描かれる。しかも、それがなかなか味わい深く、物語のテーマを引き立てている。

今回は制作上の都合か、相棒となったガンギブソンは登場しない。また、登場する組織は前回に続きSS-Nとなっている。

SS-Nは人間そっくりの人造人間・試作品第一号のモドキを生み出した。モドキは人工タンパクでできており、銃で撃たれたり、刃物で傷つけられても、死ぬことはない。血の代わりに流れるのは泡状の液体である。しかし、ジャンパーソンの武器ジャンバルカンを食らってしまったら、流石にひとたまりもないようである。モドキの注目すべきところは戦闘力ではなく、人間そっくりという部分である。ジャンパーソンには相手を人間、ロボット、またはそれ以外かを判断する能力があり、ジャンパーソンは完全にモドキを人間と判断する(特に、人間に化けているネオギルドのロボットを見破る時に活躍する能力)。それくらい、精巧に造られているのである。基本的にジャンパーソンは敵が人間の場合、命を奪うことはない。

SS-Nはこの作戦が成功した場合、モドキ=人造人間を大量に誕生させる計画だった。この作戦の発案者はダヴィンチ犬山。凄いネーミングだ。

今回は、SS-N=悪の組織によって生み出されたモドキが自分の存在に対して葛藤を持ち、さらには主役のヒーロー・ジャンパーソンもモドキに対して複雑な感情が芽生えていくという、単純に善と悪の戦いではない物語となっている。

登場する敵側のキャラクターをただの敵とせず、バックボーンや感情の揺れによって、善と悪だけでは割り切れない複雑な事情を描くというのは、今回の脚本の扇澤延男氏の真骨頂ともいえる。それに実質、ジャンパーソンとモドキの戦闘は無い。

今回のサブタイトル「史上初倒せぬ敵」である。つまり、その意味はジャンパーソンが物理的ではなく、倫理観的に倒せないということであろう。

そんなモドキを演じたのは土門廣さんである。そう、土門さんは「仮面ライダーZO」の麻生勝や、「ジャンパーソン」の次回作「ブルースワット」のシグを演じているのだ。土門さんのちょっと哀しげな目が非常に印象的。

今回に限り、かおるはかなり冷淡である。モドキの存在を容認せず、逆にモンスターとして骨の一欠片、血の一滴も残さず、完全抹殺をせよとジャンパーソンに告げる。まるでかつてのジャンパーソン=MX-A1のようだ。

 

死なないモドキと名もなき女

モドキ「人工タンパクでも、親からなんか産まれなくても、俺は人間だ!!」

冒頭、モドキは家出人公開捜査の番組を見て、人間は親や子供や夫婦だとか面倒なしがらみを抱えてると、犬山に言う。しかし、犬山は3年前に妻子に逃げられたらしい(ディテールが細かい)。それに対し、事情がよく分かっていないモドキは"面倒なものがなくなって良かった"的なリアクションをする。しかし、これがフリになっているから凄い。

モドキはジャンパーソンが自分を完全に人間と判断したことで、少しずつ自分の存在に疑問を持ち始める。人間そっくりなのに、人間じゃない・・・。モドキは雑踏の中、親子を見つめる。そんな時、飛び降り自殺を図った女性が目の前に降ってくる。咄嗟に女性を助けたモドキは廃墟となった建物に連れて行き、保護する。しかし、女性は「死なせてくれれば良かったのに・・・。」と言う。その言葉を受けたモドキは「死ねる人間は幸せだよな・・・」と呟く。しかも、女性を見つめる眼差しがなんとも言えない。

モドキはSS-Nに戻り、自分をいっそのこと醜い怪物に改造してくれと訴える。だが、聞き入れられるはずもなく、モドキは「俺は人間だ!!」と叫び、SS-Nから逃亡。

ここまででお気づきの方はいると思うが、今回のもう一人のゲスト・自殺未遂をした女性の名前は登場していない。なぜかというと、役名が存在しないのである。OPはおろか、DVDのブックレットにも記載がない。つまり、敢えて役名がないということだ。これも凄い。

浜辺で話すモドキと女性。ここはかなりロマンティックなシーンである。まるで当時のトレンディドラマでも見ているかのようだ。

しかし、かおるにモドキを完全抹殺するように諭されたジャンパーソンは居場所を突き止め、二人の目の前に現れる。

かおるがモドキを完全抹殺すべき理由は、モドキの存在を認めてしまったら、人間社会、さらには歴史が混乱をきたすからだという。

その折、モドキを追ってきたSS-Nの一味が現れ、ジャンパーソンの動きを封じ、しかも、女性に対し、モドキが人間でないと事実を突きつけた上で、モドキを連れ去ってしまう。

だが、ジャンパーソン一人に手を汚させるわけにはいかないと、かおるがやってくる。

女性はジャンパーソンにモドキを殺さないでと懇願するが、かあるはモドキがいくら人間そっくりでも、私たちとは違うと冷たく突き離す。

それに対して女性は反論する。

女「私たちって、どういう意味ですか・・・?人間なんてみんな一人ずつ違うじゃないですか!幸せな人も、不幸せな人も、寂しい人も・・・。どうして、どうして自分が、自分こそが、人間の代表みたいなそんな偉そうな言い方するんですか!!親から生まれた人間と、科学で造られた人間、生まれてしまえばそれにどんな違いがあるって言うんですか・・・。」

凄いセリフである。

みんな違うのに、さも自分が何かの代表かのように主張する・・・。今は誰もが発言できる時代であるから、我々現代人は心に刻みたい。

しかも、セリフの内容はさることながら、このセリフは正義側が言ったのではなく、正義側に向けられたものだから尚更凄い。

基本的に正義側=主役は間違いを正すような役割だが、今回は逆に間違いを突きつけられている。絶対に正しい主役ではなく、時には間違うというのは、作品としてのリアリティを高めている。これは私の意見だが、作品内部には、自己=主役に対し問題提起する視点は時には必要だと思う。

 

今回、かおるはかなり冷淡でかつ、それにMX-A1のような過剰な言動が垣間見れた。とてもMX-A1をジャンパーソンとして蘇らせたと人と、同じ人には思えない。もしかすると、かおるのそういった一面が、MX-A1の思考になんらかの影響をもたらしていたとするならば、納得できなくなくもない。だが、そんなかおるも自らの言動を最終的に改めることになる。

そして、ラストのセリフも素晴らしい。

モドキ「俺は人間じゃない・・・。」

女「人間って何?平気で人を傷つけたり、人の心を踏み躙ったりできる人間より、生きる悲しさ知ってるあなたの方がどれだけ人間らしいか・・・。違う、違いますか?」

「人間とは?」と尋ねられて、"ホモ・サピエンス"と答えることはできるが、哲学的には明確に答えることはできない(それを考えるのが哲学)。

しかし、改めて思うのが、今回のエピソードは現代に必要だと思う。

見せかけだけの現代を切り裂く「特捜ロボ ジャンパーソン」は、今になってじわじわと切れ味を増しているのかもしれない。

 

ゲスト

モドキ・・・土門廣

ダヴィンチ犬山・・・早坂直家

女・・・白石なつみ