マサキの部屋

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特捜最前線 第370話「隅田川慕情!」について

今回は「特捜ロボ ジャンパーソン」を一旦、休んで「特捜最前線」について語りたい。気がつけば、「特捜」を当ブログで語るのは約1年ぶりとなっていた・・・。

第370話「隅田川慕情!」

1984年6月27日 脚本:塙五郎 監督:辻理

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隅田川沿いの団地で一人暮らしの老人が殺害さされた。現場にあったライターから、前科者・平沼雄一という若者の指紋が検出される。事件直前に被害者と、派手なジャンパーを着た若者らしき男が一緒に居たという目撃証言や、被害者が抵抗した際に出血させた犯人の血液型と雄一の血液型が一致していたため、雄一の容疑が深まるが・・・。

 

 

本作「隅田川慕情!」と、以前当ブログで語った、本作の前話である第369話「兜町・コンピュータよ、演歌を歌え!」と、第367話「六本木ラストダンス!」は東京の街シリーズという企画を元に制作されており、それぞれのタイトルの場所に因んだエピソードとなっている。だから今回は隅田川に因んだエピソードなのだ。

そして今回の主役は吉野刑事。基本的に「特捜」で一番好きな刑事は吉野刑事だ。

特命課は容疑者・平沼雄一の行方を捜索し、吉野刑事と叶刑事は雄一の妹・頼子をマークする。

そんな雄一と頼子は過去に、一家心中で隅田川に入水し、父親と共に助かったが、母親だけが助からなかった。その後、父親は蒸発し、家族はバラバラになった。

今回の個人的な見所は、吉野刑事が頼子=若者と接したことにより、若者に対して抱いていた不満を特命課の本部でぶちまけるシーンである。

本作の脚本は塙五郎氏。塙氏は「特捜」のライターを長年担当し、番組の中でもかなり重いエピソードを提供してきた。今回も例に漏れず、重いエピソードである。しかし、辛い境遇ながらそれを感じさせない頼子のキャラクターが、エピソードの重さを打ち消している。

 

吉野刑事の不満

特命課の本部で課長はじめとする刑事達の前で、若者に対して不満を漏らす吉野刑事。

つまり個性が無いんすよ。知ってんでしょ、あの喋り方。"それで、だから"、どいつもこいつもおんなじ。個性がないということはつまり主張がない。目先の興味であっちへフラフラ、こっちへフラフラ。何をやってもすぐ飽きる、続かない。怒りゃ拗ねし、褒めりゃつけ上がる。平気で嘘はつく。そのくせ、育児が無いときてる。

全否定である。

そんな吉野刑事は17歳の時、天下を取るくらいの気合いを持って青春を生きていたそうだ。また、頼子が隅田川水上バスを乗っていたことについてはこう切り捨てている。

ananとかnon-no見て、ただ面白がってるだけだよ。古いものの本当の良さなんか分かっちゃいないんだ。

だが、吉野刑事は事件が進むにつれて頼子、雄一=若者を信じるようになっていく。

吉野刑事の若者に対しての言葉はかなり辛辣だ。まぁ、17歳の頃、天下を取るくらいの気合いで生きている人は吉野刑事くらいだろう。そんなことをハッキリと言うもんだから、みんなに笑われている。

しかし、若者に対して辛辣な言葉は、ラスト、頼子に向ける吉野刑事の素敵な笑顔のフリとなっているのだから凄い。吉野刑事を演じた誠直也さんの笑顔はマジで素敵なのだ。

 

今回「隅田川慕情!」は味わい深い作品である。若者=頼子が中心に描かれているが、被害者の老人の哀愁も並行して描かれている。そう、家族に捨てられた一人暮らしの老人だったのだ。亡くなった老人に素っ気ない遺族に対して、紅林刑事と橘刑事が怒りをぶつけるシーンが存在。また、被害者と年齢が近いのか、老刑事船村が要所要所で活躍している。

「特捜」は刑事ドラマの中でもかなり地味な部類である。派手さでは勝負せず、早計な結論も出さず、じっくりと構えながらドラマを進行していく。つまり、その地味さこそ、「特捜」の魅力そのものなのだ。しかも、事件そのものではなく、事件に関わる人間達の人生もリアルに描かれている。そう、バックボーンがしっかりしているからこそ、骨太な刑事ドラマとして「特捜」は唯一の輝きを放っているのだ。

今回の脚本を執筆した塙氏は、転落した弱者が犯罪者になってしまうストーリーが多い。そのストーリー性は私がよく語っているメタルヒーローの脚本を数多く担当した扇澤延男氏と重なる。

私が脚本家さんの名前を意識するようになったのは、こういった素晴らしい脚本家さんの作品に出会えたからなのだ。この出会いがなければ、私はこのブログもやっていなかっただろう。

 

ゲスト

平沼頼子・・・小林聡美

雄一・・・美木良介

父親・実・・・谷村昌彦