死ね死ね団・・・・・・。
ポケモンのわざマシン28「しねしねこうせん」を想起させるふざけたネーミングの悪の組織で、昭和の特撮番組「愛の戦士 レインボーマン」に登場する。
その死ね死ね団には「死ね死ね」と何十回も連呼する、一度聞いたら忘れられない「死ね死ね団のテーマ」があり、カルト的な人気を誇っている。
今回は死ね死ね団について語るのだが、その前に「レインボーマン」について説明しなければならない。
1972年10月6月〜73年9月28日(全52話)NET(現:テレビ朝日)系で放送。製作は東宝、原作は川内康範氏だ。日本のヒーローの元祖「月光仮面」の原作者である川内康範氏の作風は仏教をバックボーンとし、「レインボーマン」のキャラクターと設定はその最たるものと言える。そして「レインボーマン」と、後に製作された川内康範氏原作の特撮番組「ダイヤモンド・アイ」(東宝)、「コンドールマン」(東映)は川内康範三部作とされている。
「レインボーマン」は1話完結ではなく連続モノで、毎回怪人が登場しないストーリー重視の内容だ。ストーリーの進行の中に敵味方問わず登場人物の人物像と、死ね死ね団とレインボーマンの攻防がキッチリ描かれた。当時の特撮番組は人気がなければ1クールまたは2クールで打ち切られてしまうので、「レインボーマン」の全52話=4クールは大往生である。また当時、主題歌「行けレインボーマン」の替え歌が流行ったらしく、そこからも「レインボーマン」の人気の高さが伺える。
「レインボーマン」の主役はヤマト・タケシ(演:水谷邦久)で、ヤマトタケシがインドの山奥でダイバダッタ(演:井上昭文)の元で修行し、レインボーマンに化身する能力を身につけた。レインボーマンとは如来の力によってもたらされた七つの超能力を持つ化身である。
七つの化身
・ダッシュ7 太陽の化身
・ダッシュ1 月の化身
・ダッシュ2 火の化身
・ダッシュ3 水の化身
・ダッシュ4 草木の化身
・ダッシュ5 黄金の化身
・ダッシュ6 土の化身
ダッシュ7がレインボーマンの本体で、基本的にはダッシュ7になってから臨機応変に他の化身に化身する。
多種多様な能力を持つレインボーマンだが、力を使い果たすとヨガの眠りという、全身が石化し座禅を組んだまま、5時間仮死状態となって力を蓄えなければならない。それはレインボーマン最大の弱点ではあるが、ストーリーの緩急をつけるためには効果的な設定だったと思う。
ヤマト・タケシについては個別の記事でじっくりと語りたいので、ここからは本題の死ね死ね団について語っていく。
死ね死ね団は日本人抹殺を企む組織でリーダーは謎の紳士ミスターK。
死ね死ね団は特撮界の名だたる悪の組織の中でもガチ勢に属している。
御多福会という宗教団体を隠れ蓑にニセ札をばら撒き日本経済を混乱させたり、複雑な外交情勢につけ込み諸外国の外交官を暗殺し、日本を世界から孤立させようとするなど、ふざけたネーミングとは裏腹に死ね死ね団は日本国家に実害のある作戦を展開してきた。
劇中ではタケシの母ヤマト・たみ(演:本山可久子)や周辺人物の会話から死ね死ね団の作戦が一般市民の生活に多大なる影響を及ぼしていることが分かり、その実害も具体的に描かれていった。
死ね死ね団リーダー・ミスターKは"日本人が世界侵略"をしていると考え、それを阻止するために行動を開始した。事がうまく運ばないと感情的になりやすく、失敗した部下はすぐに処刑してまう独裁者。国籍不明だがたまに"ルー語(懐かしい)"のような英語を話す。
ミスターKを演じたのは東宝特撮ではお馴染みの平田昭彦氏。東映の特撮番組では大鉄人17(77年)のキャプテンゴメスを演じた。平田昭彦氏は紳士的な人物だったようでミスターKははまり役と言われている。
さらに死ね死ね団の幹部達は美女ばかり。恐ろしい悪の組織に華を添えつつ、女同士の戦いも繰り広げ番組を盛り上げた。
男性幹部も存在するが戦闘員とは変わらない出で立ちで、その出で立ちは緑色の制服にマスクを被り、テンガロンハットである。特にマスクのデザインが何をモチーフにしているは不明で非常に不気味。
2016年1月20日にレインボーマンの廉価版DVDが発売され、付属の冊子にレインボーマンの脚本を担当した伊東恒久氏のインタビューがあり、そこで死ね死ね団のルーツを語っていたのでその一部を引用したい。伊東恒久氏はダイヤモンド・アイ、コンドールマンの脚本も担当、川内三部作全てを手がけている。
伊東 日清、日露戦争後に欧州全体に広がった人種差別政策で、日本人(アジア人)を世界からはじきだそうとする「黄禍論」とヒトラーが唱えた選民思想や、彼が行ったホロコーストなどをベースにして死ね死ね団という秘密組織を作ったんです。
脚本家 伊東恒久インタビュー1
2015年10月8日インタビュー
文・構成 石井良和
DVD 愛の戦士レインボーマン キャッツアイ作戦編 2 より
「黄禍論」は要約すると黄色人種がやがて白人社会・国家にとって脅威になると主張したものだ。
「レインボーマン ダイヤモンド☆アイ コンドールマン大全 70's川内康範ヒーローの世界」(岩佐陽一 編 双葉社)ではレインボーマンの企画書が収録され、そこにも死ね死ね団が「黄禍論」をベースにしていると記されている。
ヤマト・タケシのヤマト家の墓標には大和家と刻まれ、ヤマト・タケシ=レインボーマンと日本人を抹殺を企む死ね死ね団の戦いはまさに日本(大和)と「黄禍論」の戦いだ。「黄禍論」をベースにここまでの作品を作ってしまったのは本当にすごいと思う。放送コードが緩かった時代だがらこそ出来たのだろう。
特撮番組は子供向けである。表向きは"分かりやすい"善と悪の戦いの構図だが、その裏ではそういったものがベースとなっていることがある。爪痕を残した作品というのは得てしてそういうものかもしれない。